生きていると、仕事で失敗したり、目標に達成しなかったり、楽しみにしていたことがドタキャンになったりなどのがっかりすることもあるが、他人から快くない言葉を投げかけられたり、嫌がらせをされることもあって、人間関係で憎しみや怒りでいっぱいになることもある。
けれど、似たようなネガティブな出来事が降りかかった時に、それほど問題視しない人といつまでも怒りを持つ人もいる。
この違いはどこからくるのだろうか?
受け止め方のちがい
お局様の言葉で怒りがおさまらなかった同期がいた。
新卒で入社した会社では毎朝のお掃除当番を事務職の女性全員で交代で担当していた。
二人ペアになって、30分ほど早く出社して、オフィス内や玄関先などをお掃除していたのだ。
同期とペアになったある朝、二人で玄関前の歩道に落ちている落ち葉を掃除した。
その後、30分後に出勤してきたお局様が
「おもてに葉っぱが落ちていたわよ。」
と言ってきた。
私は、
「落ちてるんだ。掃除をしに行こう。」
と思い玄関先の歩道へ向かった。
同期と一緒に掃除を始めたが、同期は怒りながらほうきで落ち葉を集めていた。
そして夕方になり仕事を終えて帰り支度をしている時、同期が
「本当に頭にくる!」
と怒っていた。
私は何があったのだろうかと思い
「どうしたの?」
と尋ねたら、
「えーーー!朝のことだよ!」
と当然のように怒りをぶつけてきた。
彼女は、私が朝のことをすっかり忘れてしまっていることに驚いていたが、そもそも私には、怒りの火がつかなかったこともあって、彼女がまだ怒っていたことに驚いた。
怒りに着火するかしないかには原因がある
彼女にとっては『怒り』だったけれど、私にとっては、『教えてくれたこと』だったのだ。
木の葉なんて落ちる物だし、数分前に掃除してまた落ちていたとしても当然だと思っていたので、それをお局様が教えてくれた。
と解釈していた。
同じことを言われても、受け手の受け止め方によって天と地の差があるな、と思ったのだった。
偶然、この時のお局様のお言葉は、私の怒りに火が付かなかっただけであるが。
どうして同僚には着火して、私には着火しなかったのか、と考えるとその『原因』もわかってくる。
相手との関係性
日頃から同僚がお局様をどう思っているか、にも左右される。
同僚がお局様に対して好意を持っているのかいないのか、によって当然ちがってくる。
また、同じく、この関係性にも『原因』がある。
憎しみが捨てられないと倍増する
最初からまったく気にならない出来事なら問題がないが、一度怒りに火がつくと、それは憎しみや恨みへと変貌をする。
そして忘れたくても忘れられず、一日中怒りが頭の中を占めていたり、翌日になっても毎日毎日頭から離れなくて、更に怒りや憎しみでいっぱいになってしまう。
私もここ数年はそのような生活だった。
寝ても覚めても怒りでいっぱいで、怒りの対象人物は夢にまで何度も登場したほとだった。
怒りや憎しみなんて、とっとと捨ててしまった方がいいし、自分でもそうしたいと思っていた。
だけど、頭の中が相手への怒りでいっぱいで他のことを考えようとしてもしつこくこびり付いて忘れ去ることができない。
たわしでこすっても落ちない鍋の底にこびり付いた焦げ跡のように。
仕事など他のことへ集中している時にふっと忘れることがあっても、その怒りがまた蘇る。
その時、何が起こるのかというと、怒りがプラスされていくのだ。
怒りはポイント方式
怒りは、過去の関係のない怒りや憎しみまで復活させて、
「そういえば、あの時の●●さんからも酷い扱いをされた」
などと怒りがふつふつとぶり返してきて、それらもプラスされる。
気がつくと、怒りや憎しみのポイントが100倍くらいになっているのだ。
お買いものをしたときのポイントカードやマイルはなかなか貯まらないけれど、怒りと憎しみのポイントは無意識レベルでどんどん溜まっていく。
溜まったポイント
怒りや憎しみののポイントが溜まるとマイルと違って楽しい旅先へいくことはなく、気がついたら、どろどろとしたネガティブな世界にいるのだ。
そうなると、
「最近なんとなく上手くいかない」
「運が悪くなった」
のように感じる。
そんな世界に行きたいなんて、もちろん思ってもいないものだ。
「悪いのはアイツだ!」
と思ってしまうとますますその世界から抜け出せなくなる。
捨てられる人とポイントを溜める人のちがい
上述した落ち葉の話に戻ると、同じことをお局様に言われたのに、二人の受け止め方がちがっていた。
同僚はお局様の言葉で怒りに火がついたわけだけれど、それは心の中にお局様の言葉に反応するトラウマがあったから。
偶然私にはなかっただけに過ぎない。
怒りを溜めないポイント
もし同じ言葉を投げかけられたのに、友人は平気で自分は怒ってしまった場合、
「怒らない友人が変だ。」
と思うのではなくて、
「自分はどうして怒ってしまったのだろう。」
「自分はどうして憎しみを捨てることができないのだろう。」
と自分自身へ問いかけてみるようにしている。
そして幼少時代にまでさかのぼってみる。
子供の頃に我慢したことや、怒られたこと、悲しかったことなどを思い出す作業をする。
つらい幼少時代を過ごした人はトラウマも大きい。
トラウマは無意識レベルに蓄積されているので、自分と向き合わないとなかなかわからないものである。
だから一人でゆっくりと時間をとって自分と向き合うことが大切になる。
まとめ
他人からの言動で怒りを感じる人もいるし、平気な人もいる。
その違いは、無意識レベルにあるトラウマに反応するかしないかである。
幼少時代から我慢したり、無視されたり、悲しかったりしていた人はトラウマも大きい。
その時の我慢が蓄積されてしまったのがトラウマとなって、他人からの言動に反応してしまうのである。
怒りが湧いてきたとき、自分のトラウマに反応したのだと気づき、我慢していた幼少時代の自分に
「つらかったね、もう我慢しなくていいんだよ。」
と語りかける。
そして人生で楽しかったことを思い出す。
楽しかった時の写真を見たりしても効果がある。
これからもこのような楽しいことが訪れることに目を向けると憎しみは消える。